2018年8月12日日曜日

イーロン・マスクと空売り投資家達

テスラCEOイーロン・マスク氏の衝撃的なツイートは、「空売り筋への仕返し」という意味では目的を果たせたかもしれませんが、それも恐らく一過性で、今後さらに大きな問題になる可能性があります。テスラ投資家は今まさに大きな決断を迫られているのではないでしょうか?
以前より同氏が空売り筋を目の敵にしていることは有名ですが、業績で見返すという信念を忘れ、安易な方法で息の根を止めにいったなという印象です。過去を振り返っても上場企業のCEOがここまでの暴挙を働いた例はないのでは?株価操作と疑われてもしょうがない行為であり、私はテスラの末路が見えた気がします。
WSJによると2018年8月1日の時点でテスラ株の空売り残高は105億ドル。当時の時価総額が550億ドル程度でしたから発行済み株式数の約2割が空売りに回ってることが分かります。これは時価総額が15倍以上ある2位アップルを抑えて堂々の米市場1位でした。ただテスラ株は2010年のIPO(17ドル)から株価は21倍となっており、ここ数年間ずっと空売り筋は軒並み大打撃を受けていました。わざわざ冒頭のようなツイートをしなくても既に痛い目に合わせているだけに、現状相当追い込まれているのでは?と勘ぐってしまいます。それか知らないところで余程むかつくことを言われたかですね。いずれにせよ私はこのまま済むとは思えないので、テスラ投資家は今後もホールドするならば相当な覚悟を持った方がいいと思います。
しかしイーロン・マスク氏もあれですが、テスラへの空売り筋のヘッジファンドはさらにアホの極みですね。私は常に思うのですが空売りに自信満々になっている人は市場を舐めているか、相場を知らないとしか思えない。テスラが割高だと思うのは一般的な常識で、私でも分かる。割高な資産を見つけるのはそう難しいことではなくて、それが落ちる始めるのを予想するのが肝で腕の見せ所。しかし私はそれ自体がほぼ不可能であるというのが持論です。
Stanphyl CapitalのMark B. Spiegel氏は、2013年、テスラ株が90ドル近くから空売りを始めて、同氏のファンドの運用に多大な損害を与えています。「下落は近い」と言い続けてはや5年、未だ続けられているのがすごい。また大物ヘッジファンドGreenlight CapitalのDavid Einhorn氏もテスラ株の空売りで有名ですが、同様にテスラ株のせいでファンドのパフォーマンスは大きく落ち込んでいます。
現状の業績を見れば株価は明らかに割高ですし、ビジネスモデルや競争環境からも厳しい見通しと言わざる得ないです。ただ株価が将来を予想するものである以上、わずかでも大成功を起こす可能性がある限りどうなってもおかしくない。特に現在の楽観的な市場環境では株価が下がる方に賭けるのは投機そのものだと思います。過去、幾つものヘッジファンドが適正価格にかけて(殆どがよりリスクの低い裁定取引にかけて)は消えていきました。いずれも狂気と言われる市場の動きに翻弄され、資金が持たず、市場がようやく落ち着いた頃(価格が戻った頃)まで生き延びることができませんでした。一般投資家が空売りをする必要は一切なく、短期的なパフォーマンスは度外視して長期ホールドオンリーで十分事足ります。そして問題のあるところには関わらないことが賢明だと思います。

2018年8月6日月曜日

TWLO(トゥイリオ)

TWLO(トゥイリオ)はクラウドベースの通信を手掛けるAPIで、2016年に上場した新興企業です。同社のサービスを使えば低コストかつスピーディーにアプリケーションへ通信機能を装備できます、ハイテク投資家ならば今一番熱いSaas系企業を多く見ていると思いますが、私は同社にひと際注目しています。クラウドの広がりとともに、クラウド上でのコミュニケーションツールの重要性は日に日に高まっています。
時価総額は先週の終値ベースで59億ドル程度。私はかねてより中小型株投資は難しいと考えており、基本100億ドル未満というのは度外視してきました。一方でより高いリターンを目指すためには中小型が避けられないとも感じており、これは新たなチャレンジとなります。しかもハイテクセクター、かつSaas系は現在極めてバブリィなバリュエーション。
それでもここ2ヶ月以上前から、同社の第2Q決算(明日の朝に出る)に注目してきました。以前CRMの記事などでも言及し気にはなっていた株ですが、前回の第1Qの決算は予想を大幅に超える内容であり、かつクラウドベースのコールセンターを提供するFlexが驚異的な成長率を示しました。もちろんライバルも豊富でAmazon Connectや、Five9、NICEなどとも競合していますが、クラウドベースのコンタクトセンターは現在10%程度しか進んでおらず、余地は大きいと考えています。
また同社の強みは、音声以外にもSMS、動画、チャットなどにも柔軟に対応できるサービスに加えて、有力なサードパーティであるSlaesforce、Zebdeskとの連携に強い点です。(そのため私はSalesforceが買収すればいいと思っていた。)目先は乱高下するでしょうし、もしかしたら明日の決算で暴落するかもしれない。それでも同社のビジネスモデルの将来性や業績推移を予想する中で、少なくとも近いうちに100億ドル以上の企業価値には育つと感じています。
同社の取引先はもともとUberが有名で他にもNetflix、Twitter、Facebookなどの大手が並びますが、現在中小企業にまで多岐にわたります。2016年の上場以降、最大の取引先であったUberが離れて株価は大きく下落しました。ただ足元はUberへの依存度は売上高の4%程度まで低下しており、もはや問題はなく、それどころか第1Qは新たに5000社以上の新規顧客を獲得し、現在顧客数は54,000社にもおよびます。
さらに借金は0で、フリーキャッシュフローがプラスなのは大きい。金利上昇や景気後退などのリスクも考慮しても、資金繰りに心配はなさそうです。また最大の脅威であるAmazonとの良好な関係を築いていることなどから当ブログでは向こう数年で大きな価値を生むと判断しました。

ポートフォリオ銘柄更新

JNJ(ジョンソンエンドジョンソン)APR3,2012 65.88@1500株
HD(ホームデポ)MAR1,2012 47.46@2000株
V(ビザ)JAN4,2012 25.29@4000株(分割調整済)
GOOGL(アルファベット)DEC16,2011 312.98@400株(分割調整済)
NKE(ナイキ)DEC21,2012 26.28@3000株(分割調整済)
AMZN(アマゾン)MAR02,2012 179.3@500株
PCLN(プライスラインドットコム)DEC21,2012 618.88@100株
MA(マスターカード)NOV21,2013 74.7@1000株(分割調整済)
ADBE(アドビシステムズ)SEP8,2017 155.24@800株
TENCEN(テンセント)JAN26,2018 464.20(HKD)@2000株
追加
TWLO(トゥイリオ)AUG3,2018 62.50@1000株
クラウド通信のTWLO(トゥイリオ)を追加しました。

2018年6月30日土曜日

2018ロシアW杯優勝予想

2014年ブラジル大会に引き続き予想。前回はまぁ想定内のつまらない予想をして外してしまったのでリベンジです。しかし最近のサッカーはスター選手の個人技もいいですが、アメフト同様かなり戦術的ゲームになるので面白いですね。昔に比べるとスピード感も桁違いです。
私は海外サッカーとNFLが好きで、W杯は94年のアメリカ大会から可能な限り見てきました。娯楽として楽しむだけでもいいですが、やはり投資家なるものあらゆるものを分析して予想をしていくという作業は金にならなくてもいい訓練になります。今回ははっきりいって全く自信がないのですが、自分自身の感性を試すいい機会だと思っています。
トーナメント表
jleague.jpより引用
ずばり予想する決勝のカードはコロンビアVSブラジルです。そして優勝はブラジル。コロンビア2位は自分の中では堅くて、優勝は最後までブラジルとフランスで迷いましたが、最終的にブラジル優勝を選択しました。コロンビアの対抗となり得るのはスイスかクロアチアでしょうが、個人的にクロアチアは早々に足元をすくわれる気がしてなりません。まぁ外しても遊びですが当たれば勢いにのって、今イメージしている少しリスクがある銘柄をポートにも追加しようかと考え中です。(昔、麻雀が相当調子がいい時に買った馬券は勝率が異様に高かったから。笑)
それと話は変わりますが、日本対ポーランド戦の終盤の戦い方に対する批判は個人的に非常に残念ですね。私は全くもって何が悪いのか分からない派です。こういう批判をする人は、きっと仕事でもなんでも本物の勝負というものを経験した事がない人だと思います。全てに言えることですけど「言うは易く行うは難し。」
麻雀だってカジノだって一番難しいのは押し引き。特に目を瞑って「えいっ」と勝負することは容易いけど、勝負手で降りることは本当に勇気がいる行動。そういう意味で西野監督には運もあるけど本当に冷静だったと思いますね。

2018年6月10日日曜日

ドラマで話題の手術支援ロボット intuitive Surgical

最近ドラマで話題の手術用ロボット。モデルとなった「ダヴィンチ」を開発したのは米インテュティブサージカルです。1995年創業の米企業で現在の時価総額は540億ドル。内視鏡手術用のロボットでは完全なる独占状態であり、業績・株価ともに右肩上がりです。海外のアナリストからは医療業界のAppleとの評価も受けています。
ただ結論から述べると私は同社株を薦めるつもりはさらさらなく、むしろドラマを見てこの株へ投資を考えている投資家がいるのならば、それを戒めるべくこの記事を書いています。会社自体は大変素晴らしく、それを疑う余地は全くないのですが、人類を救っても投資家を救うとは限らないというお話です。
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intuitive Surgical










手術支援ロボットのダヴィンチは主に内視鏡手術で使用され、従来よりも大幅に術時間を短縮し、傷口を最小限に留めるとともに出血を抑え、合併症の確率を引き下げ、医者は座ってオペができるという優れものです。画面に映る3Dの映像を見ながら数ミリ単位の繊細な手術を可能としており、従来は熟練の技術が必要だった内視鏡手術のハードルを大きく下げました。
日本では2012年から保険適用となりましたが、今年の4月には対象となる手術が拡大されました。手術用ロボットの市場が今後さらに拡大することに異論がある人はいないでしょう。ダヴィンチによる手術は患者・医師双方の負担を大幅に軽減し、治療の観点からデメリットはほぼありません。ただ唯一高いコストという経済的デメリットはありますが。

同社の売上高の72%がダヴィンチの交換が必要な器具の販売、メンテナンスなどの保守費用によって支えられています。昨年末時点で同社の医療ロボットは世界で約4,400台使用されています。抑えるべき最大のポイントは1台150万ドルと言われるロボットの販売ではなく、利用先から得られる収益が大半を占めていることです。また売上高総利益率は7割と極めて高く、独占企業のメリットを最大限に享受しています。

これだけ素晴らしい企業ではありますが、5年後の株価が今より高いイメージは全く無いです。この魅力的な話は、遠い昔に私が陥った罠、3Dプリンタに酷似しており、かつ多くの投資家が危険性を指摘していたかつての独占企業Gilead Sciencesも浮かびます。
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まずインテュティブサージカルの売上の大半を占めるダヴィンチの交換用品については同社以外の企業が供給する時代が近いうちに訪れます。ジェネリックと同じです。既にそれ専門の企業も出始めてきており、少なくとも利益率は落ちます。社会保障が絡む医療業界であれば尚更で、政府主導で進められる可能性もあると予想します。
また今年から同社のロボットに関する多くの特許が切れ始めることもありますが、同業の競争にさらされることになります。既に昨年10月にTransEnterix (TRXC)がSenhanceというダヴィンチに酷似した医療ロボットを投入してきています。ダヴィンチにはない高機能もいくつか持っており、例えば患部の「触覚」を再現する機能やカメラを制御できる融通さを兼ね備えています。さらに恐ろしいことにダヴィンチの売上の大半を占める使い捨ての器具が再利用可能であるというおまけつきです。しかし未だに導入数が1桁との噂があり、普及していないようですが(医療業界とのコネクションが弱いとの話)、少なくとも値下げの圧力は受けることになるでしょう。
将来の最大のライバルでいうとメドトロニック(MDT)も無視できません。2019年に本格的な医療ロボットを投入予定で(本来は2018年だったが)、会社の規模からいうとインテュティブサージカルの倍あります。しかもTransEnterixとは違い、すでに世界中の病院と長期的な関係を持つ医療機器最大級のメーカーであり、機能が互角なら劣勢でしょう。
他にも日本では川崎重工業とシステメックスが合弁で医療ロボットの開発に取り組んでおり、さらに先になりそうですが、我らがJohnson&JohnsonもアルファベットXのプロジェクトであるVerbと組みロボット手術と大規模データと機械学習の統合に取り組んでいます。これが本格化するとどこも全く太刀打ちできない可能性もあります。
少なくとも独占企業のビジネスがいつか競争にさらされることは当たり前のことであり、今後5年で5倍以上の市場規模となる医療ロボット業界ならば尚更です。特に製造業はいずれ価格競争に陥ることは確実で、いずれは機械そのものよりもディープラーニングを含めた機械学習の能力、数々の症例やオペのデータをいかに保有し有効活用できるかという問題に行き着くでしょう。そう考えると将来の医療は優れた箱(機械)を開発するよりも仕組みを作る会社こそが投資家に大きな利益をもたらすと考えます。
ただインテュティブサージカルの現在における優位性は確かにあり、競争相手も遅れていることから当面の株価は強い可能性があります。ただ長期で大きな利益を目指す投資家にって脆弱な投資先と言わざる得ないですね。

2018年6月5日火曜日

シャープ再生を振り返る

この世に立ち遅れた産業などない。あるのは立ち遅れた技術とマネジメントだけ。
by鴻海精密工業 郭台銘
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シャープ
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JDI

今日、シャープによる東芝のPC事業買収が話題になりましたが、つい2年前まで瀕死だった同社が、少額とはいえ再び買収する側に回る日が来るとは・・・。
業績面でも変化は顕著です。4月に発表されたシャープの2018年3月期決算は4年ぶりの通期黒字となりました。また年間通じて全ての四半期が黒字になるのは10年ぶりで、6年ぶりに配当も再開しています。内容を見ても前期は全てのセグメントで売上高が増加しており、財務状況も大幅に回復していることが見て取れます。
足元は2,000億円規模の増資観測(優先株償却や研究開発費用)もあって下げていますが、シャープがここ2年で劇的に変わったことは確実でしょう。結果的にホンハイに買収されたことが全てのステークホルダー(株主、銀行、取引先、従業員など)にとって素晴らしい決定だったことが証明されたとも言えます。
一方で産業革新機構が再建を進めるJDI(ジャパンディスプレイ)は相変わらず危険水位に位置しており回復の兆しすら感じません。国家プロジェクトは延命のために税金を垂れ流すだけで、大きく局面を変えられることはなく、我々は今後もこの事例を胸に刻むべきだと感じます。今思えばシャープとJDIの合併なんて、よくそんな恐ろし案が議論されいてたと思います。この2社については以前書いたのでご参考。
シャープ   JDI

再生の2年間、シャープに強力な新製品が生まれたわけではなりません。ホンハイによる資金供給は大きな役割を果たしましたが、主な戦略は販路の拡大(主に中国)、コストカット、成果主義の導入、ほぼこれだけでです。これだけというのはあまりいい表現ではないですが、とりあえず親会社の戦略次第で会社は大きく変わりました。
シャープだけでなく、多くの日本企業が高コスト体質、グローバル戦略の弱さを抱えており世界における競争に打ち負けています。
ホンハイは明らかに、相当気を使ってシャープ再生に努めているのですが、それは今後より円滑に日本企業買収を進めるための配慮です。また日本企業の中にはシャープ同様、経営陣を替えるだけで化けると思われている企業がわんさかあると思われ始めています。実際数年前から海外のアクティビストは日本株を買い進めており、オリンパスの5%を握った米ヘッジファンドのバリューアクトなどはその筆頭です。第一次ハゲタカブームはその後のリーマンショックなどもあり、進まなかったですがこれからは分かりません。
確かにアクティビストも鴻海も自分の利益のために動くのですが、郭台銘氏も言うように経営陣へプレッシャーを与える存在は必要だと思います。国が進めるコーポレート・ガバナンスコードよりも本物のグローバル企業やファンドのプレッシャーに勝るものはなく、中長期的には日本をより強くするでしょう。

2018年5月24日木曜日

AdobeがMagentoを買収

AdobeがEコマースプラットフォームのMagentoを16.8億ドルで買収。
また同時に2021年までに80億ドル規模の自社株買い計画も発表しています。(従来は2019年までに25億ドルだったものを増額。)
当ブログではアドビについてはかなり強気で見ております。アドビの過去記事

マーケティング事業拡大を望むアドビにとって、Eコマースが弱点であることは多くの識者が指摘していました。実際salesforceも早急にEコマース分野を拡充する必要があったことから2016年にDemandware買収に動いています。
アドビがECを強化するのであれば、かねてより協業関係にあるMagentoとの大方の予想通りとなりましたが、これでSalesforce、Oracleと本格的にぶつかり合うことになります。

Magento買収によりアドビはwebサイトの構築はもちろん、デジタル広告や、決済機能まで幅広く提供できるようになり、競争力は大きく高まると予想します。
Magentoの同業としてはAutomattic傘下のWooCommerce、IBMのWebsphere Commerse、オラクルのATG web Commerce、Salesforce傘下のDemandwareがあります。また最近ではSaas型のECサイト構築を手掛けるカナダのShopifyなども台頭しており激戦ですが、Magentoは今のところトップシェアを持ちます。
アドビの買収戦略が優秀であることは有名ですが、今回もマーケティング部門の大きな戦力となると予想されています。マーケティング部門ができたのはまだ最近ですが、売上高は既に全体の3割程度まで成長しており、楽しみな存在です。